ボリビア 挨拶のスタイル Bolivian greeting style, cultural difference
ボリビアへ来る前から聞いていたのは、アブロッソ(ハグ)とベソ(キス)の挨拶文化の違い。私は、これまでの海外経験からもハグやキスに対する抵抗はあまりありませんでした。しかし、それは相手が外国人だからと割り切っているからこそできたもの。外見が同じ日本人とキスやハグができるのか…。少々、不安がありました。
ボリビアで最初に降り立ったのは事実上の首都ラパスでした。ラパスでは一か月暮らしたのですが、そこではボリビアらしい握手、ハグ、キスの挨拶。キスは右頬を軽くあわせるだけのこともあれば、チュっと音を立てる人や、頬に唇をあててキスをする人もいます。「唇は当てなくてもいいけど、音は出さないと失礼だよ」と言われたこともあったので、毎回の挨拶の瞬間は、私にとってどうやったら音が出せるかの研究の時間となりました。
一か月のラパスでの生活を終え、ボリビアの第二の都市サンタクルスへ来ました。サンタクルス県はサンフアン日本人移住地がある県です。サンフアンから空港へ迎えに来てくださった日系人の方と交わしたのはお辞儀の挨拶でした。その時は、日本語で声をかけられたことへの安堵感や、やっと移住地の方に会えたという興奮で、お辞儀するんだな、と意識はしませんでした。
サンフアン移住地での暮らしが始まりました。日系人の方との初めての挨拶は、お辞儀でした。そして、ボリビア人の先生方とは、握手をしました。日常生活でも、道で日系人の方に会ったら会釈、ボリビア人に会ったら手を振ります。招待された時は、お辞儀、人によっては握手もします。
日系の方同士でも、もちろんお辞儀はされますし、相手との距離の取り方は意識されているように思います。しかし、特に日系の男性は私が女性ということで気を使ってくださっていると思うし、日系人と関わりの多いボリビア人は日本人はキスとハグの習慣がないということを知っているから握手の挨拶にしてくださったのです。
私が日本人なので特に気を使ってくださっていたんだなぁと感じます。その気遣いに、優しさと寂しさを感じていました。
しかし、私もとうとうこの移住地でキスとハグの挨拶をすることができました。
最初の機会は、大晦日でした。大晦日には中央公園でカウントダウンと花火の打ち上げがあるので多くの方が集まります。そして年が明けた瞬間、そこにいる人々でハグとキス、そして「新年おめでとう、いい年になりますように」と言葉を交わすのです。その場にいた私もその中に入り、たくさんの方とハグとキスをしながら挨拶を交わすことができました。中には、私に対してそのような挨拶をすることに戸惑っているように見える方もいました。日本人をよくわかっているからこその対応だと思います。
二つ目の機会は、私が一週間程の旅行から移住地に帰って来た時です。「先生、元気にしてたのー?」とハグの挨拶をしてくれました。日系人の男性の方ですが、私は全く嫌な思いはしませんでした。帰りを待ってくれていたんだなぁととても暖かい気持ちになりました。
三つ目は、夏休み(12月、1月)が終わり、職員の仕事始めの時です。約一か月ぶりに会ったボリビア人の先生方はハグとキスの挨拶をしてくれました。彼らにとって、この子はボリビア流の挨拶をしても大丈夫と思ってくれたのかなと思うと、本当に嬉しかったです。
私でも、会えた喜びや祝う気持ちをハグで表したいことがあります。相手と同じ方法で気持ちを表現できるのは、とても気持ちのいいことだと感じています。