ベトナムでの日本の漫画事情(2) Japanese comic books in Vietnam (2)
Tinaです。
ベトナム語で、漫画は”truyện tranh”となっていますが、この言葉には漫画と絵本の両方が含まれています。そのような言葉の解釈もあって、ベトナムでは漫画は子ども向けのものだと思われがちです。ベトナム人の漫画家の作品はまだほんのわずかで、この1,2年で注目されるようになりましたが、ベトナムでは日本の漫画が80%を占めていると言われています。
ベトナムで人気のある日本の出版社と言えば、「小学館」「講談社」「白泉社」と「集英社」ですが、角川書店の漫画にも注目が集まっています。
今現在ライセンスを取り、日本漫画を中心に出版している主なベトナムの出版社はキムドン出版社やチェ出版社(NXB TRE)やTVM出版社などが挙げられますが、しかし、TVM出版社は今現在経営中止のようです。 キムドン出版社のロゴ
チェ出版社のロゴ
TVM出版社のロゴ
各出版社の特徴を「日本の漫画の出版事情」をもとに簡単に紹介すれば、以下のようになります。
① ジャーナル
チェ出版社は青年読者を向けの少女漫画、青年漫画や女性漫画をメインに出版している一方、キムドン出版社はより若い読者像を対象に子どもや少年や少女の漫画を出版しています。代表として、チェ出版社はあだち充先生の作品の著作権を持っていますが、キムドン出版社は藤子・F・不二雄先生や青山剛昌先生の作品の著作権を持っています。
② 漫画の形式
装丁は日本の漫画と違います。まず、帯がないのが特徴です。表紙は本体とくっついて、小口折表紙となっています。この数年日本の漫画のようなカバーの方が多くなってきましたが、昔は小口折表紙が圧倒的でした。
最近チェ出版社をはじめ、各出版社は装丁に力を入れています。取り外せるカバーにしたり帯をつけたり表紙の背景を変えたりすることが増えてきました。
マンガの中でよく使われる効果音に関しては、キムドン出版社は、効果音もきちんとベトナム語に翻訳するのに対し、チェ出版社やTVM出版社は、効果音は日本語のままにして、その上にベトナム語を小さく書く形となっています。
TVM出版社が2007年に発行した「ビューティポップ」と2008年に出版した「+ANIMA」は装丁の革命をもたらしました。質のいい紙を使用し、当時では表紙から内容まで文句をつけようのない最も完璧な作品だと言われています。それは、他の漫画より値段が倍ぐらいでしたが、すぐ売り切れたそうです。
(写真:Nguyen Hoang Viet)
「+ANIMA」の表紙は、日本語がそのまま残されています。
③ 広告の方法
新しい漫画紹介やイベント紹介などに関してはほとんどフェースブックなどのSNSで行っています。特にキムドン出版社はフェースブックでスケジュールや漫画の紹介を載せたり、読者とのやり取りのイベントを作ったりする他、編集者・翻訳者と読者との交流会やサイン会もよく開催しています。
読者の漫画希望を聞くコーナーとか、出版社と読者との密接な関係が見られます。このように読者層をSNSを使用している若者を中心にしてやり取りをしているので、全体の読者に向けてとは言い切れませんが、各出版社が努力をしていることは感じられます。
文化の違いや著作権の難しさなどから、ベトナムで人気が出そうな漫画でもまだ読めない漫画がたくさんあると思います。現実には、主に漫画の読者となるのは収入がない若者なので、一週おきに発行されているマンガは多くの部数を売り上げるわけではなく、出版社の売り上げには結びつかない状況にあります。しかし、日本の漫画をベトナム人の読者にもっと紹介できるように、このブログでも紹介しましたが、各出版社が積極的に頑張っているので、これからも日本発信の漫画はベトナム語に訳され、ベトナム人の読者はより面白い日本の漫画が読めるようになるでしょう。