沖縄と多文化共生(4)Okinawa and Multiculturalism (4)
7月21日。お昼過ぎに、Pink Dot Okinawaの会場、国際通りのてんぶす通りに向かう。てんぶす広場は那覇のメインストリートのど真ん中にあって、東京で言えば渋谷のスクランブル交差点のようなものだと言えば伝わるだろうか。
広場に近づくにつれて、那覇太鼓の音が、道の向こうから聞こえてくる。もうすでに、ピンクのテントと集団が見えてきて、いやおうなしにテンションがあがってきた。
見えてきた広場は、ピンクの服を着た参加者でいっぱいだ。その奥に、レインボーのスクリーンの上にPink Dot Okinawaのキャラクターの「ぴんくま〜る」が見える。那覇太鼓に聞き入っているうちに、開会宣言が始まった。
開会宣言は、日本語と英語のバイリンガル(二言語)でなされたのが印象にのこった。その後の進行もすべてバイリンガルである。確かに、海外からの参加者も多いので、日本語を解さない人もいるのだろう。(シンガポールのピンクドット関係者や、台湾、香港から参加者も来ていたそうだ。)その日のスケジュールは、以下のようだった。那覇太鼓、開会宣言、ミニライブ、ドラァグパフォーマンス、Living Togetherなどのライブ、沖縄出身の男性とアメリカ人男性のカップルの里帰り結婚式、最後に全体の写真撮影があった。
今回の里帰り結婚式は、現在カナダに住む二人のために、ピンクドット実行委員会がクラウドファンディングというオンラインサービスで寄付金を募って実現した結婚式だ。東京や大阪ではなく、家族意識が強いという沖縄で同性婚を行うことにより、地方に住むゲイ・レズビアンは大いに励まされるだろうという視点だ。
挙式の際、一時激しい雨が降り、みなテントの中に入った。会場は、誰もいなくなったように見えた。式は可能なのだろうか、という思いがよぎる。
しかし、少しすると雲が晴れてきて、ぱらぱらと人が出てくるようになった。そして二人が誓いのキスをするときは、みなステージの前で彼らを見つめていた。
まるで、二人のこれまでを象徴しているようだ、と感じた。
ピンクドット沖縄実行委員会の共同代表の1人である砂川秀樹さんから、イベントの数日後にお話を伺った。
ピンクドットは、「見ている」人、「見られている」人で分かれやすいLGBTパレードと違い、緩やかなのだそうだ。ひとつの場所に、沖縄県のひと、県外の人、海外の人など様々な人々がやってきて、交流をして、去っていく。パレードのように主張を掲げ、正面からぶつかるのではなく、いろんな人が混じることを重要視しているという。アライ(LGBTをサポートするいわゆる異性愛者の人、または心と身体の性が合致する人)の方々も含め、「開いていき、解いていく」のが目的だとおっしゃっていた。
私はその言葉に、非常に心を打たれた。
「性的マイノリティ」に関する問題を考える人々のなかでも、様々な立場、考え方がある。例えば、婚姻制度自体に反対する人たちもいて、その人たちは今回の同性婚についてどう思っていたかわからない。また、台湾のレズビアン女性と、東京のゲイ男性、沖縄のLGBTの子どもを持つ親、その3人が思うことはそれぞれ全く違うだろう。(そして、そのような人たちは今回のPink Dot Okinawaにいた、と思う。)
それでも、集まって一日を一緒に過ごすこと、それがこれからの対話や関係性作りのきっかけになることが、単純にいいなあ、と思った。
この研修やピンクドットをきっかけに、さらに沖縄とつながっていけたら、一緒に取り組めることがもっとあれば、と思う。このようなチャンスを与えてくれた、今回の研修に関わった人々には、感謝しきれない。そして、沖縄という土地に、「にふぇーでーびる(沖縄本島の沖縄語でありがとう)」という気持ちでいっぱいだ。