言語としてのマンガ Manga as medium of language
ブラジルにおける日本語学校の始まりは、移民できた人々が彼らの子どもたちと言葉を共有するためのいわゆる「継承語教育」であった。
しかし、現在のブラジルで日本語を学習しているのは、日系人だけではない。むしろ、マンガやアイドルなどへの興味・関心がきっかけで学習を開始したブラジル人学習者が増えている。
彼らの日本語に対する知識の多くはアニメやマンガからであり、教室にはキャラクター達が発した様々な言葉が持ち込まれる。
例えば「縦」と「横」、という方向が授業の中で出たとき、生徒が「ああ!Levanta!」と嬉しそうに言った。Levantaは「立つ」という動詞の命令形、すなわち「立て」である。どんなマンガに出てきたのかはわからないが、そのキャラクターを真似して勇ましく「立て!」と言うのには驚いた。他にも同様に「Levantaでしょう?」と言う生徒がいたのでマンガの影響力はさすがだと感心してしまった次第である。
かくいう私もマンガは好きだ。これまでそれほど役に立つとは思っていなかったマンガの知識だが、こちらに来て非常に役立っている。つたないポルトガル語で生徒と会話をするとき、同じマンガを知っていると話が早い。いわばマンガが私と彼らとの共通言語になっているのだ。
また、同じマンガを知っているということ自体の効果もある。単に共通言葉としてだけでなく、マンガ自体のHistória(物語性・歴史性)をも共有しているという事実が、彼らとの距離をさらに縮めてくれているように思われる。
※写真はサントス市内にあるマンガの図書館Gibiteca