日本語・スペイン語家族のバイリンガル子育て Raising Japanese/Spanish bilingual in a family
先日、東京都内のカソリック教会で、日本語・スペイン語バイリンガルを育てている親御さんの前で話をする機会があった。7名の母親、5名の父親の参加があり、私は日本語とスペイン語の二言語で事前に説明を書きいれたパワーポイントを使いながら、日本語で話した。
まず、シスターからのスペイン語での私の紹介、続いてお祈りが始まる。私は職場がキリスト教を基盤とする大学であるので、会議の前に「祈る」ことに は驚かないが、祈り方はやはり違うものだ。東京にいながら、スペイン語とカソリックという私の日常ではない異文化 の前に、2,3分、一人取り残された体験。
会合前は、主催者であるメキシコ人で日本語が流ちょうなシスターから、参加者は日本語が上手だからと楽観的に聞いていたが、やはり、始まってみるとシスターの同時通訳が必要となった。親御さんたちの目はパワーポイントに、耳はシスターの通訳に集中する。終了後、すぐさま取り囲まれて、さまざまな質問を受けた。日常の中でどうやって子どもに自分(親)の母語であるスペイン語を教えられるか。今からでも遅くないか。3言語目の英語を教えても大丈夫か、切実な具体策である。
子どもを初めて育てるという迷い、その中で子どもの幸せを見越して、何が将来につながるのかと心配し、子どものために何かをしてあげたいと思うのは親の共通した願いだろう。私の話が、相手の親御さんたちに伝わったという実感が残るのは、実はコミュニケーション言語の問題だけではなく、専門家が自分と一緒に考えてくれるという安心感や同じ立場の親の子育て経験を聞くといった、言語以外の部分も大きかったのだと考えている。その点では、親御さんにとって、日ごろ気にはなってもなかなか考えることができない言語の教育について、集中して考える時間を持てたということが大切だったのではないだろうか。
「次はいつですか」ともう聞かれたとシスターが嬉しそうに話してくれた。この短い会合が研究協力をしてくださっているシスターや親御さんたちへの返礼となれば何よりである。