街の別の顔 The other face of Okubo town
新大久保というとコリアンタウンだけど、実はこの街はそれだけではないもっとたくさんの顔を持っている。
それを教えてくれるのが、大久保駅を中野方面に出てすぐ、通称「イスラム横丁」だ。
ここはその名の通り、イスラム文化圏のものを売っている雑貨屋さんやご飯屋さんがひしめき合う。「突撃取材だ!」と意気込んで来たら、残念、狙っていたお店は閉まっていた。
しかし、心配はご無用。同じビルには、他にも面白いお店がたくさん入っている。今日はそのうちの一軒のネパール料理屋さんに入ってみることにした。
……とはいえ、ネパールをほとんど知らないので萎縮ぎみでお店に入ると、意外とたくさんのお客さんが。みんなネパールの人のようだ。とりあえず、なんかのダンスが流れるテレビの前に陣取った。
メニューを開くと、いろいろ入っているネパールセットなるものがあるので、ちょっと高いけど、お店の人に「これください」。
それから、「あれってネパールの映画とかですか?」
すると「あれはインド映画です」。
日本にあるインドカレー屋の店員さんのほとんどはネパール出身だと聞くが、ここではネパールと思いきやインドか……。
そうこうしているうちに、ネパールセットが到着。
メニューによれば、下はライスとダル(豆のスープ)、上段右からタルカリ(野菜カレー)、アチャル(大根の漬物)、チキンレッグ、別皿がマトン。どれもすごくおいしい。
………と、がっついていたら、食べ終わってしまいそうだ。お店はそれなりに混んでいて、取材どころではない感じ。
すると、小さな子どもを抱っこしてあやしているお父さんが、こちらに近づいてくるではないか。すかさず「お子さんかわいいですね」的なオーラを全力で出すぼく。
そしたら、ありがたいことに、お父さんが話しかけてきてくれたではないか。「さっきのはインド映画だけど、今やっているのはネパール映画です」。
この会話をきっかけに、少しお話しすることができた。お父さん(30代前半くらい?)は日本に来てもう10年以上、お子さんは1歳半で日本で生まれたそうだ。
ネパールには日本人の観光客が大勢訪れるという話になり、「一回もないし、このお店も初めてです」というといたく驚かれた。
お母さんは「ネパール行ったことないのにそれを食べる日本人はなかなかいない」となぜか苦笑い。食欲旺盛ですみません……。
一家が立ちさってほどなくお店を出たぼくは、幸せな気分だった。
他のお客さんが向こうから話しかけてきてくれたのがうれしかったのだ。
また行けば会えるだろうか。そのころにはあの子は、「バイバイ」だけじゃなくて「こんにちは」の挨拶もしてくれるだろうか。