プロジェクト研究経過報告(1):母語・母文化としてのスペイン語と久松ことば Short report on ‘Multilingually’ project 1: Spanish and Hisamatsu language variety as mother tongue and culture
ここ何回かのブログで書いたように、宮古島の久松には、このウェブサイトのテーマである「多文化共生」「多言語アイデンティティ」を追いかけている中で、すっかり魅せられている。
今回のプロジェクトを始めてから、これまでの新宿区からさらに、二人の共同研究者に導かれて新たな「場(フィールド)」へと足を踏み込んだ。一つは、マリア・ペレス=ムリリョ先生(Universidad Complutense, マドリッド)との調査で、東京都内のカソリック教会にある子どものためのスペイン語教室。
もう一つは、善元幸夫先生との調査 で、宮古島市久松小学校・中学校での自尊感情を高める可能性を探った授業実践研究。
いずれも、自分自身の母語につながるアイデンティティと言語が関わる。
久松ことばの話し手は、少数者になったとはいえ、久松ことばを母語とするおばあやおじいは健在である。その元気なおばあやおじいを前に、久松ことばもユネスコが宣言した「消滅危機言語」の一つであることが頭をよぎると、その生きていることばをどのように「守れるのか」とつい悲観的な思考が頭を占める。一方で、「守る」というアプローチではなく、久松ことばの魅力を、例えば下地勇さんのように、久松の文化やことばを積極的に楽しむこともできるだろう。久松の子どもたちの身の丈に合わせて、一緒に「学ぶ」ことも可能だと考えたい。
今年度は、このウェブサイトに徐々に研究成果を載せられることを目指している。